元気がなくてもいいのかもしれない
2021年10月6日(水)
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今日、エレベーターに乗り込んで振り向いたら、同じくエレベーターに乗りそうな雰囲気の老夫婦がいらしたので、開くボタンを押して待っていた。でも、二人の視線や挙動から察するに、ちょうどとなりのエレベーターも到着したみたいだった。夫婦の奥さんのほうが、扉を開けて待っていた私に対して手を挙げて合図した。
その手には、
「待ってくれてありがとう」
「こっちのエレベーターに乗るよ」
「行って大丈夫」
が含まれている気がした。
その合図を受けた私は、相手に伝わるかわからないくらいの小さな頷きを返して、扉を閉めた。
箱の中にぽつんと一人になって、条件反射的に今の出来事を反芻した。
私はずっと、元気がなかった。愛想よく微笑んだりしなかった。
でも、合図してくれた、手を挙げて。
全部自分の妄想かもしれない。そもそも僕が上の階に行くのに対して二人は下の階に行きたかったのかもしれない。合図をくれた奥さんも、内心では「愛想悪い人だな」と思ってたかもしれない。
でも、心の中にろうそくくらいのぬくもりがあった。
「元気がなくてもいいのかもしれない」
エレベーターの中に設置された鏡に映る自分の目を見て、久方ぶりにそう思った。
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